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甲状腺

甲状腺の病気

1. 甲状腺とは

甲状腺は首の前部ののどぼとけの下にある蝶が羽をひろげたような形をした器官で重さは20g位あります。この甲状腺からは甲状腺ホルモンが分泌されて血液の中をまわって全身の細胞にいたり作用を及ぼします。

2. 甲状腺ホルモンの作用

甲状腺からは2種類のホルモンが分泌されており、様々な作用がありますが、その主なものは全身の細胞の新陳代謝を調節する作用で、甲状腺ホルモンが多すぎれば代謝は異常に盛んになり、一方たりなくなれば代謝が低下します。

3. 甲状腺の病気

甲状腺機能亢進症(血中ホルモンが増加するもの)

バセドウ病

亜急性甲状腺炎(一過性)

無痛性甲状腺炎(一過性)

出産後一過性甲状腺中毒症

プランマー病

甲状腺機能低下症(血中ホルモンが減少するもの)
橋本病(慢性甲状腺炎)

手術後(バセドウ病、甲状腺癌)

アイソトープ治療後(バセドウ病)

亜急性甲状腺炎(一過性)

出産後一過性甲状腺機能異常症

クレチン症

単純性甲状腺腫

結節性甲状腺腫

甲状腺の腺腫、癌

4. 甲状腺機能亢進症(甲状腺中毒症)

① バセドウ病
甲状腺全体がはれここからホルモンが過剰に分泌されることにより様々な症状がおこる病気です。この病気は女性に多く、20~30歳代の人に最も多く認められますが最近では50歳以降の人にも認められるようになりました。

【原因】

甲状腺の細胞膜にある甲状腺刺激ホルモンの受容体の自己抗体(自分の体の成分に対する抗体)が何らかのしくみででき、しかもその抗体のなかにTSH(甲状腺刺激ホルモン)と同様に甲状腺細胞を刺激する抗体ができたためと考えられています。しかし、現在もどうしてそのような抗体ができるのかは解明されていません。

【症状】

大部分の例で甲状腺がはれて大きくなっており、約半数の例では眼が突び出していますがその他に甲状腺ホルモンが多すぎる結果として動悸、不整脈、多汗、手足のふるえ、体重減少、精神的イライラ、食欲亢進、月経不順などの症状があげられます。又男性患者では稀に突然、数分から数時間手足が動かなくなるという発作(周期性四肢麻痺)をおこすことがあります。

【診断のための検査】

少量の採血を行い、その中の甲状腺ホルモン(2種類)および甲状腺刺激ホルモンを測定し甲状腺ホルモンの増加を確認することで診断がつけられる様になりました。更に重要な検査として血液中のTSH受容体に対する抗体(TSH受容体抗体)の検出があり、陽性であればバセドウ病と診断されます。

【治療法】

治療の原則として病状が不安定な時は安静を保つことが必要です(体の代謝が著しく亢進しており心臓に過度の負担がかかっているため)。

(A)薬物療法

ほとんどの患者さんは薬物療法で治療されています。甲状腺でホルモンが出来るのをおさえる薬を飲む方法で2種類の薬が用いられます。この薬を飲むと多くの場合内服後2週間目位から効きめがでてきて3~4カ月すると症状はほとんどなくなりますが、すぐに内服をやめると病状が悪化するので2年位は飲まなければなりません。なおこの薬の副作用として皮膚症状(発疹)、白血球減少(内服初期に起こることが多いです)などの症状が認められることがあるため医師の指示通りに通院しながら内服していかなければなりません。治療開始後病状が安定し服薬量も減ってくると、最終的には薬をやめることが可能となりますが、約半分位の例では1~2ヵ月から2~3年のうちに再発するため、薬の再開あるいは他の治療が必要となります。

(B)放射性ヨード療法

相当量の放射性ヨードを飲むことで甲状腺の組織の大部分を放射能で破壊して甲状腺から出るホルモンの量を減らす方法です。この治療により甲状腺のはれは小さくなり症状は改善しますが、約70%の症例では20~30年後に効きすぎて甲状腺ホルモンの不足状態になることが珍しくありません。その場合には甲状腺ホルモンの補充が必要となります(原則としてこの治療は子供や妊娠中の人には行いません)。

(C)手術療法

甲状腺の大部分を切除して甲状腺から出るホルモンの量を減らすという方法です。この方法が最も早く症状を改善させる方法ですが、危険がゼロではないということと首に傷あとが残ることが欠点です。又この方法でも再発することがあり、取り除く甲状腺の量が多すぎれば甲状腺機能低下症になり、やはり甲状腺ホルモンの補充が必要になります。

② 亜急性甲状腺炎

甲状腺の炎症により細胞が破壊され一時的に血中ホルモンが増加します。甲状腺はあまり大きくなりませんが硬くはれ痛くなりしばしば発熱する病気です。この病気の原因はまだはっきりしておりませんがウィルス説が最も有力です。痛みはくびの前の方全体に感じたり、のどの痛みとして感じ又高熱がでることがあるので、扁桃腺炎や咽頭炎と間違えられることがあります。約半数においては痛みの移動も認められ、触診時甲状腺部の圧痛を強く訴える人も多いです。この病気の治療に関しては、放っておいても1~2ヶ月のうちに自然に治りますが解熱、鎮痛目的にアスピリン等の処方を行うこともあります。又重症例には副腎皮質ホルモンの投与(内服)を行い劇的な効果が得られることもあります。多くの場合、治療後甲状腺ホルモン値は正常に戻りますが、まれに甲状腺ホルモン値が低下した状態が続き甲状腺機能低下症になることもあります。

無痛性甲状腺炎

亜急性甲状腺炎と同程度の甲状腺腫大をおこしますが、圧痛、高熱などの症状はなく、ただ一過性に動悸、発汗などの甲状腺機能亢進症状を呈し1~2ヶ月で自然になおります。

出産後一過性甲状腺中毒症

妊娠出産後2ヶ月位に血中ホルモンが増加して機能亢進症を起こしてきます。多くは一過性でまもなく正常となります。妊娠によって免疫系が乱れたため起こるものとされています。

プランマー病

甲状腺にこぶ(腺腫)ができてそこで甲状腺ホルモンがたくさんできるためにおこる甲状腺機能亢進症です。症状はバセドウ病と同じですが眼が突び出すことはありません。我が国では比較的珍しい疾患です。治療は手術によりこぶを取り除くのが一番良いとされています。

5. 甲状腺機能低下症

甲状腺機能低下症は甲状腺ホルモンが足りないために起こる病気で原因はいろいろですが全てまとめて甲状腺機能低下症とよばれます。

橋本病(慢性甲状腺炎)

甲状腺機能低下症の殆どを占める病気です。この病気の典型的なものは甲状腺全体が硬く大きくはれ甲状腺をさわってみると表面がデコボコしています。しかし初期のものや軽いものは甲状腺がはれているがそう硬くはなく表面もあまりデコボコしていません。この病気は圧倒的に女性に多く、好発年齢は一般に中年以降に多いとされていますが、最近では10才代から発病するものも少なくないことが分かってきました。この病気では甲状腺の細胞の破壊が進み血中ホルモンを正常に保つことができなくなり甲状腺機能低下症を引き起こします。しかし、病気の経過中に甲状腺細胞の破壊が強いと血中の甲状腺ホルモンの増加がおこり、甲状腺中毒症を起こします。症状として病気が進んだ典型例では皮膚のむくみ(多くは指で押してもへこみが残らないむくみ)が認められます。むくみは全身におこりますが特に顔面に強く現れます。また頭もぼけ気力もなくなり動作ものろくなり、口もゆっくりきくようになりしばしば声がかれます。その他の症状として皮膚の乾燥、脱毛、手足の冷え寒がり、便秘、月経異常など様々な症状を呈するため、患者様によっては更年期障害やうつ病になったと思い婦人科、心療内科を受診し診断が遅れてしまうこともあるのです。診断は甲状腺ホルモンの測定を行い機能をしらべます。治療においては、原因に関係なく甲状腺ホルモン剤を服用することになります。適当量を飲めば1~2ヶ月で症状は改善し普段と変わらない生活を送ることができるようになります。

6. 単純性甲状腺腫

甲状腺全体がほぼ一様に腫れているが自覚症状もなく、甲状腺ホルモンは正常、甲状腺各種自己抗体も陰性の場合をいいます。

7. 結節性甲状腺腫

甲状腺にこぶ(結節)ができるも全身的には特に症状のないものをいいます。基本的に良性のものであれば非常に大きくなって周囲の組織を圧迫したり、外見上具合が悪いということが無ければ手術は必要ありません。しかし、実際には結節性甲状腺腫と診断されるも癌であったということもあり確定診断は難しく定期的経過観察が重要です。

8. 甲状腺癌

甲状腺癌の多くは甲状腺のこぶとして現れてきます。甲状腺癌は未分化癌と分化癌に分けられますが大部分は分化癌です。分化癌は癌のうちでは悪性度が低く、早期に発見して切除してしまえば再発することは殆どありません。又他の部分への転移のために手術して全部をとることが出来なくなっても、その状態で20年30年と生きていることが珍しくありません。この型の癌の症状はこぶが硬いこと、腫瘍の発育が早いこと、声帯に行く神経を圧迫したり侵触するので声がかれること、頸のリンパ腺がかたくはれることなどです。一方未分化癌の悪性度は非常に高く急速に進化し、手術しても全部をとることは不可能なので、放射線治療が良いと考えられています。この種類の癌は幸い少ないものでしかも殆どが50才以上の人に起こります。

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